世界で量子コンピューターの競争は激しさを増しているそうですが、日本ももちろん世界と切磋琢磨しているのが量子コンピューターの世界です。
この記事を踏んだのも量子コンピューターの何が嬉しくて、どんなことができるようになるのか知りたくてやってきたのではないでしょうか。
この記事を読めば量子コンピューターのスゴイところを皮切りに、量子コンピューターの仕組みからシミュレーションについてまでサクッと理解できるようにまとめています。
実は、量子コンピューターの元となる量子論の世界では日本人がいくつものノーベル賞を取っています。
湯川秀樹、朝永振一郎、江崎玲於奈さんなどなど、量子に関わる分野で成功を納めている人は少なくありません。
そんな日本とも切っても切り離せないアインシュタインを死ぬまで悩ませた量子論の世界から生まれた量子コンピューターを解説していきます。
草猫店長の目次ノート
量子コンピューターのスゴイところ
そもそも量子コンピューターの何が美味しいポイントなのかってわかりませんよね。ポイントを絞ってみました。
❷. 荷物がもっと早く届くようになる
❸. 自動化を加速させるアプリケーション構想がある
❹. AI関連の処理能力をアップ
❺.世界の大手企業がこぞって開発中
❶. 量子の美味しいとこだけ取っている
量子は「粒」と「波」の二面性を持っており、切っても切り離せません。
量子コンピューターはこの二面性の良いとこどりをするために生まれました。
量子の「波」の状態の時に膨大な無数のパターンを一度に残すことができ、「粒」の状態の時にたった一つの回になるパターンを取り出すことができる。
そんなことを可能にしたのが量子コンピューターです。実際には電子を自在に操って同行するのではなく、量子に模倣した磁性体などを利用して作ります。
量子コンピューターは現状では3種類の量子を模倣したやり方があります。量子コンピューターの種類については後ほど解説します。
❷. 荷物がもっと早く届くようになる
「組み合わせ問題」と呼ばれる今までのコンピューターが苦手にしていた計算があります。
数学で学んだ記憶がある人もいるかもしれませんが、複数の道筋の中から一番、最短経路を見つけだす方法です。
コンピューターの場合は処理に膨大な時間がかかりますが、無数の選択肢の中から最適解を取り出すことが得意とする量子コンピューターであれば高速で答えを見つけ出すことができます。
ですので、配達員が配達する順番の最短距離を見つけ出すことができます。そうすると荷物がもっと早く届く可能性があります。
❸. 自動化を加速させるアプリケーション構想がある
工場の効率化を最適化するためのアプリケーションが日本で構想されており、アプリケーションの構想は今までなかったために世界からも注目されているそうです。
工場のマネジメントは一般の人にはイメージしにくいかもしれません。
機械や従業員、不良品率など無数の要素と見えないボトルネックが工場には潜んでいます。
そのため従業員が死にものぐるいで働けば売り上げも比例して高まるなんてことはないでしょう。
機械は機械で回し続けるためには電気代が必要だし、従業員数に応じて何時間運転させるのかなど考える要素が無限に近くあります。
そんな中で量子コンピューターを使ってそれぞれの最適解を抽出することを可能とするアプリケーションが構想されています。
要するに工場がより本格的に自動化されていくことを実現してくれるということですね。
❹. AI関連の処理能力をアップ
機械学習と呼ばれる人工知能を生み出すための分野があります。
機械学習ではニューラルネットワークという考え方が採用されています。
ニューラルネットワークとは人の脳みその中にあるニューロンの動きを模した動きのするネットワークのことです。
ニューラルネットワークでの計算には無数のデータを取り込みますのでデータ量に応じて処理は大きくなります。
そのため量子コンピューターを用いるとさらなる高速化が見込めると考えられます。
❺.世界の大手企業がこぞって開発中
IBM、グーグル、インテル、マイクロソフト、メルカリなどなど、こぞって世界が注目しています。
内閣府もImPACTと呼ばれる量子コンピューターを開発しました。(人によっては量子コンピューターではないと呼ばれているらしいです。)
量子コンピューターは同時プレイ
上の動画はコンピューターサイエンスの基本知識(回路の知識)がなくても話が掴めます。英語のものですが動画をみているだけで雰囲気が伝わるので非常にわかりやすいです。
GIZMODEで上の動画を日本語で説明しているサイトもあるで貼っておきます。
外部リンク:従来のPCの1億倍高速な量子コンピューターはどのような仕組みで動いて物理的限界を突破しているのかがわかるムービー(GIZMODE)
量子コンピューターと今までのコンピューターとの違いは「0」と「1」の組み合わせがあります。2進数のことですね。
2桁の2進数の組み合わせは「00」「01」「10」「11」の4パターンあります。
従来のコンピューターは全部で4パターンあることを示すためには4回の命令を実行しないといけません。
量子コンピューターの場合は「00」「01」「10」「11」の4パターンを最初から全てを保有している(確定はしていない)ため、計算が早いと言われています。
式が決まった単純計算の場合、従来のコンピューターの処理数にルートを乗せた分だけ時間を短縮できるそうです。
1万回の処理であれば、ルート1万回なので100回の処理で済みます。

2進数が20個になっても同じです。2進数が20個で表現できるパターンは2の20乗です(約100万パターン)
100万パターンも同時に重なり合った状態で保有することができます。
もちろん重なり合った状態から欲しい答えを導き出すためのアルゴリズムも別に必要になってきます。それでも一部の計算処理の高速化は待った無しです。
300ビットで表現できるパターンは地球上に存在する細菌の半数に近いそうです。
それだけのことを量子ビットで表現できたらどれだけ天文学的な数字を即座に計算できてしまうかはなんとなくイメージできるのではないでしょうか。
量子論について知らない人からするとなんのこっちゃ、と思うかもしれません。
量子に分類されるミクロな単位量の世界では、観測する者が現れるまではその物質が存在し得るありとあらゆる位置を不確定にした状態で存在していることになります。
いざ観測すると位置(と運動量)が決定してしまいます。
観測する前と後の「振る舞い」が変わる性質があるということですね。この性質を生かして、観測する前と後の美味しいとこどりをして計算させよう!という発想が量子コンピューターになります。
これ以上はややこしいので割愛しますが、量子論について気になる人は【 量子論とは 】仮想通貨に出てくる量子系の話題がわかるようになるを読んでみてください。
ざっと話が掴めるのと、文系でも優しくわかる本やアニメも紹介しています。
D-WAVE systemsという会社が出しているD-WAVEの最新機種ではある単純な計算の処理速度が古典的コンピューター1億倍だそうです。
昔から量子論は電化製品に生きている
「電子」の振る舞いの研究は量子論の代表的な者です。
みなさんが使っているパソコンに関わらない電化製品には半導体が入っていますが、半導体は「電子」の動きを利用して動きます。しかし半導体はどうやって作られるのでしょうか。
量子論の中でも特に計算式にフォーカスした量子力学の分野の計算式が半導体を作るためには必要です。
というのも、電子エネルギーの値を一定にして半導体の中で取り出していく必要があるのですが、そのために電子エネルギーの値を計算しないといけません。
ですので電子も取り扱う量子力学が必要になります。
現実の半導体では抵抗が存在しているため空中にある電子とは値が異なるため値を制御するためにより高度な手法で量子力学を応用しています。
量子コンピューターの課題
素晴らしい進歩に繋がる量子コンピューターですが課題はあります。
まず量子コンピューターを本格的に作るとなると複雑な温度管理が必要になります。絶対零度に近い温度にまで冷やす必要があります。
温度管理が必要なほど繊細な存在なため理論を忠実に再現しようとすると大掛かりにならざるを得ません。
また、目立った成果がまだないと言われているので冷めた目で見る人も少なくありません。
しかし、最近ではD-Waveと呼ばれる量子コンピューター機が北京の空港までのタクシールートの最適解を導き出したりと徐々に成果を上げていっています。
これから実際に役に立つ場面が増えてくれば世の中の量子コンピューターに対する見方は変わっていくでしょう。
量子コンピューターの種類

結構な種類が増えてきています。
大まかに「イジングマシン方式」と「量子ゲート方式」の違いを説明します。
「量子ゲート方式」は 2007年以前に開発が進んでいた方式です。
「イジングマシン方式」は 2007年以降に開発が進んでいた方式です。
「量子ゲート方式」はいろいろな計算処理に適した量子コンピューターです。量子用の専用の電子回路を用います。
今までの半導体はAND、OR、NOT回路でしたが専用の3種類の回路「アダマールゲート(H)」・「回転ゲート(π/8)」・「制御NOTゲート(CNOT)」を組み合わせて量子計算を可能にします。
まだ実用化には時間がかかっているようです。
「イジングマシン方式」は一つの処理に特化した量子コンピューターに使われます。磁性体と呼ばれるものを利用して量子と同じ動きを模倣します。
「イジングマシン方式」を利用して “組み合わせ問題” に特化したマシン、 “暗号処理” に特化したマシンなどが開発されています。
仮想通貨であれば、何にでも使えるPCグラフィックボードとマイニングに特化したASICチップとの違いに似ています。
量子コンピューターでも一般的な用途と専門的な用途で開発が同時に進んでいっているということですね。
現実世界では「イジングマシン方式」が用途に特化しているだけあって使われ始めています。
元祖D-Waveも機種をアップグレードしていっているので企業向けにまずは普及していきそうです。
私たちの生活に溶け込むのは「量子ゲート方式」のコンピューターが小型化してきてからでしょうね。
最近は「量子ニューラルネットワーク方式」とも呼ばれるものでImPACTという機種があります。日本で研究が進んでいます。
量子コンピューターのシミュレーションができる

実際にクラウドテストで使えるサービスもあります。「QNNクラウド」です。量子ニューラルネットワーク方式のクラウドシミュレーターです。
組み合わせ最適化問題などをシミュレーションできるようです。使ってみた人の記事が別の人であるので興味のある人は参考にしてみると良いかと思います。
他にも中国のサービスなどにもありますが順番待ちだったりします。
自宅でシミュレーションする場合
Pythonと呼ばれるプログラミング言語でもPythonという言語のライブラリに「SymPy」と呼ばれるものがあります。
理系の学生であれば統計処理に使ったことがあるか、R言語とどっちを使うか考えたことがあるかもしれません。
このPython用のライブラリ「SymPy」は無償で扱えるのでこれで量子ビットの動きを模した処理がテストできます。
量子コンピューターとは まとめ

量子コンピューターの知識についてサクッとまとめました。
世界中の大企業や国が研究を進めており、情報がどんどん錯綜していっているような気がするかもしれません。
そんな時に量子コンピューターの「汎用化」と「専門化」のキーワードで切り分けて考えるともう少しスッキリと量子コンピューターの世界を理解できるようになると思いますよ。
量子コンピューターについてはわかったけれど、量子論や量子力学についてはサッパリだ、という人は【 量子論とは 】仮想通貨に出てくる量子系の話題がわかるようになるで量子論についてと、それから仮想通貨との関わりについてまで解説しているので読んでみてください。
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