レバレッジド・ローンが次世代のリーマンショック級の金融商品であると言われているのはご存知ですか?
「やばいというのは聞いたけどイマイチ情報が出回っていないからよくわからない」
「市場が膨らんでるのは知ってるけどそれで何がマズイのかが基本的なところからわからない」
そんな風に漠然と捉えている人も少なくないかなと思います。
だから詳しく知りたいけど良い情報源があまりないし、小難しいのは時間がかかって面倒だなあ。って感じですよね。
そこで、レバレッジド・ローンについてニュースの話についていけるレベルで理解できるように基本をまとめてみることにしました。
・レバレッジド・ローンの潜在リスクはリーマンショック級である
・世界の不景気と合わさって一気にコケる可能性がある
・今もリスクは拡大し続けている…
詳細も見ていきましょう。
草猫店長の目次ノート

レバレッジド・ローンとは
・信用度の低い企業が対象の銀行ローン
・複数の銀行で分散して融資するローン
・融資されたローンを投資家向けに証券化したもの
これらの3つがわかればレバレッジド・ローンの基本を把握できます。
図で表すと、複数の銀行がリスクを減らすために組合となって共同で信用度の低い企業へ融資を行います。共同融資を行うことそのものはシンジケートローンとも呼びます。

次に銀行は信用度合いの低い企業への融資して債権となったローンを証券化して投資家へ転売します。

信用度の低い企業が対象の銀行ローン

信用度の低いとは具体的に、ムーディーズやS&Pの企業格付けランクがBB以下の企業を指します。
BB以下の企業の社債はひっくるめてハイイールド債(またはジャンク債)と呼ばれています。
ハイイールド債の企業群はゾンビ企業が多く、利払いを満額支払うことすらも厳しい企業が大半を占めています。一般的に、ハイイールド債への投資は”投機的”な部類とみなされています。
“投機的”な企業への投資は、金融業界だと合法的なギャンブルと呼ばれる部類の投資となります。
暗号資産で例えるなら、マイナー通貨への投資に近いのかもしれません。

複数の銀行で分散して融資するローン

レバレッジド・ローンは投機的な融資となってしまうためリスクの高いものです。
そのため、融資する際には複数の銀行で一つの会社への出資をし合う形で融資を行うのでリスク分散的になっています。
融資されたローンを投資家向けに証券化したもの

銀行は融資してゾンビ企業が混じったハイイールド債(ジャンク債)の債権を得ます。
しかし、銀行側はその債権もさらにリスクを減らすために市場へ流します。証券化して投資家たちへ転売してしまいます。
この際に、証券化したローンには名前がついており「ローン担保証券」と呼ばれています。CLOのことです。

A社のCLO、B社のCLO、Z社のCLOといった具合に、様々な証券化された債権が市場に出回り続けており、市場は拡大していっています。
ブルームバーグによると、2018年度12月までの時点で1兆ドル(113兆円)の規模を超えたようです。(参考:1兆ドル規模の米レバレッジドローン、市場の運命握る日本の銀行)
(ロイター通信いわく2019年度5月までに1.2兆ドルになったとのことでまだまだ拡大をしているそうです。)
つまり総額で銀行がこれまで113兆円超えをジャンク債へ融資してきたということですね。日銀の調査によると、1兆ドルのうち、CLOへ流れたのは0.6兆ドルとのこと(参考:米国クレジット市場の最近の動向について – 日銀レビュー)
残りは「ローンファンド」「直接投資」に別れています。
リーマンショックとの共通点
・市場規模がリーマンショック時の全盛期に近い
・融資先の信用が低い(ジャンク債)
この2点が共通点としてよく語られます。
実際のところ、リーマンショック時のサブプライムローンの市場規模は1.3兆ドルとのことで、2019年5月までの段階で1.2兆ドルであるレバレッジド・ローンはほとんど同規模と言えます。
また、融資先こそ違えど(リーマンショック時は信用度の低い個人に不動産融資)、格付けでは”投機的”な対象になっているところも同じです。
リーマンショックとの相違点
もちろん、リーマンショックとの比較は前々から指摘されていたようです。その違いとはレバレッジドローンの借り手側に借金の規制を行い、レバレッジド・ローンで融資を受けた後から急な追加の借り入れ増大などを行えないようになっています。
そのことをコベナンツと言います。ここがサブプライムローンとは違うとポイントであると言われます。
企業向け貸出は、一般的に借り手に対して財務レバレッジに制限をかけるなどの条件を付けることが通例で、これをコベナンツという。例えば、貸出先企業が追加の借り入れ等によって過大なリスクテイクを行った場合、第一弾の融資を実行した貸し手が想定していたリスクが事後的に膨らんでしまう。
「じゃあなんだ、リスクはある程度は限定されているのか。なんかリーマンショックよりも安心そうだぞ」
という印象を少しは覚えたかもしれませんが、最近の主流派コベナンツ・ライトという名目で審査を緩くした貸し出しが増えていっています。全体的に企業群の質も下がっていっているようです。
しかし近年の銀行の長期金利が儲からないことにより他の商売ネタとして利回りの良いレバレッジド・ローンはどんどん拡大をやめないようです。
レバレッジド・ローンの何が一番怖いのか
ではリーマンショックと同じ市場規模を誇るレバレッジド・ローンですが、何がそんなに世間をざわつかせているのか。という所です。
レバレッジド・ローンで怖いのは景気低迷期に雪崩のように市場の価値が下がることです。
これまで1兆ドルを超えて銀行側が融資してきたのは良いものの、もしも大きな不景気で沢山の企業らが連続倒産して、回収不能なレバレッジドローンが増えたらどうなるでしょうか。
それだけでは銀行側は破綻しないでしょうが、銀行にとっては赤字が増えてしまいます。
銀行は赤字を避けるために何をするのかというと貸したお金を突然返せということで貸し剥がしが起こってしまいます。貸し剥がしが起こってしまうとどうなるのかというとさらに多くの企業が資金繰りに困って倒産していってしまいます。
CLOの価値も一気に落ち込むでしょう。
レバレッジド・ローンの市場そのものは1兆ドルの規模感ですが、融資を受けている企業の実体経済はもっと大きな市場です。
こうした企業たちが倒産してデフォルトの血祭りが起こると連鎖倒産を誘発していく要因になりかねないということです。大量の企業倒産が失業者を招き、お得意先もダメージを受けていき経済活動を低迷させることはいうまでもありません。
ウォール街で20年近いキャリアを持つ国際アナリスト(大井 幸子さん)さんも景気減速する場面では、信用収縮が加速して売りが売りを呼ぶ可能性があると記事で書いています。
信用収縮の連鎖反応が世界に広がり、グローバルな規模で売りが売りを呼び、「世界同時株安+債券安」となるだろう。総じて、金融市場全体が巻き込まれ、機能不全となる金融危機。この点もリーマンショックと類似している。
レバレッジド・ローンは貸し余りの時期には良い
投資家の資金が余っている時にレバレッジド・ローンのような投機的な投資は良いでしょう。
しかし一方でトランプ大統領が米中貿易戦争をはじめ、10年国債と2年国債で逆イールドが生じた今、世界経済は不景気に備えて体力温存に向かう局面になってきています。
また、デフォルト率は低いのでメディアで喧伝されているよりも安全だ、とする主張も見かけましたが、レバレッジドローンの市場の中だけでは確かにリスクはそこまで大きくないかもしれません。
何かの爆弾が発動すれば連動してCLO全体の価値も下がって行く可能性はあります。例えば、ドイツ銀行破綻や中国バブル崩壊など、アメリカのレバレッジド・ローンと連動しかねない外部的要因は少なくないかと思います。
日本の銀行は国債では儲からないのでハイリスクな投資に手をつけている
農林中金のCLO残高、7兆円超 3月末時点、全てAAA格:日本経済新聞 https://t.co/ThYnZkQnt1
— 満州中央銀行 (@kabutociti) May 22, 2019
いやいやCLOの適格債ほどいい加減でわけわからんものはない。ほとんどサブプライム風味の味付けでいくらでも格付け下がるよ😅 しかも本邦勢がクジラだから自分の売りで相場が暴落~ ガンドラックが偉く心配しているが次の暴落は社債やレバレッジドローンの信用収縮祭りに決まりだなこりゃ https://t.co/6SyJVlckpv
— 今市太郎@FX strategy (@imaichitaro) May 22, 2019
日本の長期金利はマイナスですので貸し出しても利益を出すことができません。別の方法で収益を上げなければなりませんが日銀の場合はレバレッジド・ローンにもかなり投資している模様です。
ブルームバーグいわく「銀行が直接保有するCLOトランシュのうち、約30%を日本の銀行が占める。(ソース記事)」とのことで、かなり買い込んでいるようです。
特に農林中央金庫やゆうちょ銀行の買い込みが目立つとのこと。
当然ですが、もし連鎖倒産の際には一気にCLOの手放しの動きが加速して価値が急落します。
「しかし日本が手を出しているCLOは格付けAAAのものだ」
という声も聞こえなくはなさそうですが、ここまで説明したように元は”投機的”なBB以下の企業群の中のAAAがどれだけ信用ならなさそうかはいうまでもなさそうです。
というか何も知らない人がAAAというのを見てミスリードするに決まっているし、世間の声を消そうとしてるようにも見えなくもありません。
ちなみに、ハイイールド債、つまりジャンク債をトリプルAと表記するところは記憶に新しいのではないでしょうか。
サブプライムローンのジャンク債においても、本来はゴミである債権を高い格付けであるかのように見せかけて表記して市場に出回りました。
いくらコベナンツである程度は規制できているといっても信用なりませんよね。
実際、売りに出しても買い手がつかずに2日間で価格が3分の1に下落したクローバーという会社のCLOなんかもあります。
それにも関わらずCLOの融資総額が大きくなっているということは種類も増えていっているということ。
暗号資産で言うところの買い手のいないマイナー通貨のように流動性がなさすぎて価格そのものの信ぴょう性も疑わしくなっていくのではないでしょうか。
リーマンショックはなぜ起こったのか
過去のリーマンショックはなぜ起こったのでしょうか。それは信用の低い債権の転売を繰り返していったからです。
それを先導したのはどこかと言えばJPモルガンなど大手金融機関です。どう考えても回り続けるわけがないのに不思議な祭り状態で誰も聞く耳を持たなかったそうです。
マネーショートという映画では、その大手金融機関や銀行の愚かな行動や大手に忖度した格付け機関などがグルになったリーマンショックを引き起こしたことがわかります。
さて、今回のCLOもメディアの声はみんな大丈夫といっているように読み取れるのですがいささか心配に思えてきます。
たとえCLOの市場内だけでみてデフォルトリスクが低くても不景気や米中貿易戦争のような外部要因が働くと一気にドミノ倒しはあり得ると思います。
レバレッジド・ローンとは何かを分かりやすく解説した まとめ

もしも社債が暗号資産だとすると、無名の仮想通貨だけは時価総額ななぜかくてランキングはそこそこ高い。そんな仮想通貨の詰め合わせを選ぶようなものだと思います。
ビットコインですら投機的とまだまだ言われるので不適切かもしれませんが、とりあえず1.2兆ドルの巨大なブラックボックスというのだけは正しいかと思います。
しかも企業からすると高利を支払わないといけないので吹けば飛ぶところも少なくないでしょう。
と言いつつ、ドイツ銀行のCDSの7500兆円に比べたらマシです。
ドイツ銀行の場合は倒産した場合の保険金を異常なレベルで積み増していったため問題が世界を巻き込みそうになっています。
ドイツ銀行のCDSに関しては【 CDS(デリバディブ)でドイツ銀行が破綻 】CDS基本と破綻の可能性を参考にしてみてください。
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